虫歯の治療を終えたあと、しばらくして歯ぐきがぷっくりと腫れてきた――そんな症状に驚いた経験はありませんか。
「もう治ったはずなのに、なぜ?」と不安になる方も多いでしょう。
実は、治療後の歯ぐきの腫れにはいくつかの原因があります。
麻酔や器具による刺激のほか、細菌の感染や根の奥に炎症が残っている場合もあります。
軽い腫れで自然におさまることもありますが、放置すると悪化する場合もあるため、早めの見極めが大切です。
本記事では、虫歯治療後に歯ぐきが腫れる主な原因と、自宅でできるケアのポイント、受診が必要なサインについて、わかりやすく解説します。
目次
なぜ虫歯治療後に歯ぐきが腫れるのか?主な3つの原因

虫歯の治療を終えたあとに歯ぐきが腫れると、「治療がうまくいかなかったのでは」と心配になる方も少なくありません。
実は、治療直後に起こる腫れにはいくつかの原因があり、多くは一時的なものです。
原因を知ってけば、焦らず落ち着いて対処できるようになります。
ここでは、主な3つのケースを紹介します。
麻酔や処置の刺激による一時的な腫れ
虫歯を削る処置や麻酔注射の刺激によって、歯や歯ぐきの周囲に一時的な炎症が起こることがあります。
特に麻酔の針を刺した部分や器具が触れた箇所は血流が滞りやすく、軽い腫れや違和感が出る場合がほとんどです。
このような腫れは多くの場合、2〜3日ほどで自然におさまり、強い痛みを伴わないのが特徴です。
冷やしたり、清潔を保ったりして様子を見ましょう。
細菌感染や根の奥の炎症が原因の腫れ
歯の根の先に膿がたまり、歯ぐきが内側から腫れてくるのが典型的な症状です。押すと痛んだり、熱を持つような感覚が出たりします。
根管治療(歯の神経を取る治療)をした場合は、内部の消毒が完全に終わるまで時間がかかるため、治療中や治療直後に一時的な腫れが出るでしょう。
ただし、膿がたまる根尖性歯周炎のような状態は自然に治りにくいため、歯科医院での再消毒や薬の入れ替えが必要です。
自然におさまるケースと注意が必要なケース
すべての腫れが危険というわけではありません。
軽い腫れで日に日に小さくなっている場合は、自然に修復しているサインです。
一方で、腫れが広がる・痛みが強くなる・膿が出るなどの変化がある場合は、炎症が深部に及んでいる可能性があります。
「そのうち治るだろう」と放置せず、早めに歯科医院を再受診すれば、悪化を防げるでしょう。
関連記事:歯茎を押すと痛いときの4つの原因と治療法|応急処置や受診の目安も解説
治療後の腫れはいつまで続く?期間の目安と注意点

治療後の腫れが長引くと、「普通なのかな?」と不安になる方も多いでしょう。実際には、腫れの原因や治療内容によって落ち着くまでの期間は大きく異なります。
ここでは、症状ごとの目安と注意すべきポイントを見ていきましょう。
軽い腫れなら2〜3日でおさまることが多い
詰め物や被せ物など浅い治療であれば、歯ぐきへの刺激も少ないため、腫れは2〜3日で自然におさまるでしょう。
痛みが弱まり、日を追うごとに改善しているようであれば、心配はいりません。
ただし、治療後3日を過ぎても腫れが変わらない、あるいは悪化している場合は、細菌が入り込んでいる可能性があります。
経過を見ても変化がない場合は、早めに歯科医院で状態を確認してもらうと安心です。
根の治療をした場合は1〜2週間ほどかかることも
神経の近くや根の中まで治療した場合は、回復までに時間がかかります。
根管治療では、内部を丁寧に消毒しながら細菌を取り除くため、数回に分けて処置を行うことが一般的です。
そのため、治療後もしばらくの間歯ぐきが腫れたり、軽い違和感が続くことがあります。
炎症の程度によっては、一時的に痛みが増すこともありますが、数日から1〜2週間のうちに徐々に落ち着いてくれば問題ありません。
ただし、強い痛みが続く場合や、噛むと響くなどの症状がある場合は、感染の再発を疑いましょう。
長引く・悪化する場合は再治療が必要なケース
治療から1週間以上経っても腫れや痛みが引かない場合は、炎症が深い部分に広がっている可能性があります。
歯ぐきの腫れが引かない、膿が出る、熱を感じるなどの症状が続くときは注意が必要です。
放置すると炎症が骨や周囲の歯にまで広がり、歯を支える組織を傷めるおそれがあります。
再治療では、根の中を再度洗浄・消毒し、薬を入れ替えることで炎症を抑えていきます。
早い段階で歯科医院を受診すれば、症状の悪化を防ぎ、歯を残せる可能性が高まるでしょう。
「いつもと違う」「なかなか治らない」と感じたら、早めの相談が安心です。
関連記事:歯の神経が痛い!虫歯がないのにズキズキする原因と治し方
自分でできる歯茎の腫れケアと避けるべき行動

歯ぐきが腫れていると、「少し様子を見ても大丈夫かな?」と迷う方も多いでしょう。正しいケアを知っておけば、腫れを悪化させずに早く回復させることができます。
ここでは、歯科医が推奨するセルフケアと、避けたほうがよい行動を紹介します。
冷やす・うがいなどで炎症をやわらげる方法
腫れや痛みを感じるときは、頬の外側から冷やすと効果的です。
氷は直接当てず、清潔なタオルで包んで頬の外側にあてましょう。5分ほど冷やして15分休むサイクルを、2〜3回繰り返すと効果的です。
冷やすことで血流を抑え、炎症による腫れや痛みをやわらげられます。
また、冷たい水やぬるま湯でのうがいもおすすめです。口の中を清潔に保ち、細菌の繁殖を防ぐ効果が期待できます。
ただし、強い殺菌成分を含むうがい薬は、かえって患部を刺激するおそれがあるため控えましょう。
口内を清潔に保つための正しい歯みがき習慣
歯磨きをしていると、つい腫れている部分を避けたくなるでしょう。ただし、汚れや細菌が残ると炎症が悪化し、治りが遅くなります。
毛先のやわらかい歯ブラシを使い、痛みのない範囲で優しく磨きましょう。歯と歯の間は、デンタルフロスや歯間ブラシで軽く汚れを取り除くと効果的です。
食後はぬるま湯で軽くゆすぐだけでも、口内の清潔を保つ助けになります。
「やさしく」「清潔に」を意識することが、腫れを早く引かせるコツです。
腫れを悪化させるNG行動(温める・押す・触る)
腫れている部分を温めたり、押したり、もんだりするのは悪化の原因となります。血流が増えて炎症が広がり、かえって腫れや痛みが強くなるでしょう。
「温めたほうが早く治る」と思われがちですが、炎症がある間は冷やすのが鉄則です。
また、舌や指で患部を触るのも避けましょう。細菌が入り込み、化膿や再感染を引き起こすリスクがあります。
硬い食べ物や熱い飲み物、アルコールの摂取も控え、刺激を与えずに休ませることが治りを早めるポイントです。
関連記事:【保存版】奥歯の歯茎がぶよぶよで痛いときの対処法|事前に防ぐ方法も解説
歯医者に行くべき症状の見分け方

腫れがなかなか引かないと、「もう少し様子を見ても大丈夫かな?」と判断に迷う方も少なくありません。
しかし、症状によっては早期の受診が必要なケースもあります。
ここでは、受診を検討すべきサインを紹介します。
痛みや腫れが強くなるときのサイン
治療後の軽い腫れは、通常2〜3日で落ち着きます。
ただし、時間の経過とともに腫れが大きくなる、ズキズキとした痛みが強くなる場合は注意が必要です。
内部で炎症や感染が進んでいる可能性があり、自然に治ることは少ないでしょう。
腫れた部分を押すと痛む、噛むと違和感がある、熱を持つような感覚があるときは、歯科医院の受診をおすすめします。
「数日たっても良くならない」は、受診を判断するひとつの目安です。
膿・出血・熱があるときは早めに受診
歯ぐきの腫れた部分から白い膿が出る、または出血が続く場合は、炎症が根の奥や骨の周囲まで広がっている可能性があります。
さらに、微熱や頬の腫れを伴うときは、身体全体が炎症反応を起こしているサインです。
この状態を放置すると、感染があごの骨や顔全体に広がり、強い痛みや腫れを引き起こします。
抗生物質や根の再治療で改善するため、こうした症状が出たら早めに歯科医院を受診しましょう。
早期に治療を行えば、炎症が広がる前に症状を抑えられます。
放置すると広がるトラブルのリスク
腫れを放置すると、炎症が悪化して歯を支える骨(歯槽骨)が溶け出すおそれがあります。
その結果、健康な歯までぐらつき始め、最悪の場合は抜歯が必要になるでしょう。
また、腫れを繰り返す場合は、根の内部に膿の袋(嚢胞)ができているケースも少なくありません。
このようなトラブルは自然には治らないため、早期発見・早期治療が何より大切です。
「痛みが軽いから大丈夫」と油断せず、異変を感じたらすぐに歯科医師に相談しましょう。
関連記事:歯が痛い すぐに歯医者に行けない人のための応急ケアと受診目安6選
腫れを繰り返さないための予防と生活習慣

歯ぐきの腫れが治まっても、しばらくして同じ場所がまた腫れてしまう――そのような経験をする方もいるでしょう。
原因を取り除かないままにすると、炎症が慢性化して再発をくり返すため、注意が必要です。
腫れを防ぐための基本ケアと、日常生活で意識したいポイントを紹介します。
歯みがき・フロスで歯茎を守る基本ケア
腫れの再発を防ぐには、毎日の歯みがきを丁寧に行うことが大切です。歯と歯ぐきの境目に汚れが残ると、細菌が増えて炎症を起こしやすくなります。
毛先の柔らかい歯ブラシで、力を入れずに小刻みに動かして磨きましょう。
また、歯ブラシだけでは落としきれない汚れは、デンタルフロスや歯間ブラシを使って取り除くのがおすすめです。
歯と歯の間を清潔に保てば、歯ぐきの炎症や出血を防げます。
1日1回、就寝前に丁寧にケアするだけでも大きな予防効果が期待できます。
睡眠や食事で免疫を高める生活習慣
免疫力が低下していると、歯ぐきの炎症が治りにくく、再発もしやすくなります。
睡眠不足や栄養の偏り、ストレスの蓄積などは口の中の健康にも影響を与えます。
特に、たんぱく質やビタミンC、カルシウムは歯や歯ぐきを丈夫に保つために欠かせない栄養素です。
栄養バランスの取れた食事と十分な睡眠を意識すれば、身体の回復力が高まり、歯ぐきの腫れも落ち着きやすくなるでしょう。
体調管理も、歯ぐきの健康を守る大切なケアの一部です。
治療後のチェックと定期検診の重要性
治療後は痛みや腫れが引くと「もう大丈夫」と思いがちですが、油断は禁物です。
歯の内部では小さな炎症が残っている場合もあり、自覚症状がなくても再発するおそれがあります。
治療を終えたあとも、歯科医院での定期検診を受けて経過を確認しましょう。
3〜6か月ごとのメンテナンスで歯ぐきの状態をチェックすれば、早期に異常を見つけられます。
小さな変化を放置しないことが、腫れを繰り返さない一番の予防策です。
関連記事:痛みがなくても進んでいる?虫歯の進行速度と予防法を徹底解説
まとめ|早めに対処して、健康な歯茎を守ろう

虫歯治療後の歯ぐきの腫れは、多くの場合、治療による刺激や一時的な炎症反応が原因です。
軽い腫れであれば、2〜3日ほどで自然におさまるでしょう。
冷やしたり、口の中を清潔に保ったりすることで、早めの回復が期待できます。
ただし、痛みが強くなる・膿が出る・熱を感じるなどの症状がある場合は、炎症が内部に広がっているサインです。
放置すると悪化し、歯や歯ぐきだけでなく、あごの骨まで影響が及ぶこともあります。
「そのうち治るだろう」と自己判断せず、少しでも不安を感じたら早めに歯科医院を受診しましょう。
適切な処置と毎日のケアを続けることで、腫れを繰り返さず、健康な歯ぐきを保つことができます。
治療後も安心して過ごせるよう、定期的なチェックと予防を習慣にしていきましょう。
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この記事を監修した人

歯科ハミール本院 院長 赤崎 絢
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