「親知らずを抜いたあと、喉がヒリヒリして痛い……これって普通?」「風邪なのか、抜歯の影響なのか分からなくて不安」そんなふうに感じる方は少なくありません。
抜歯後の喉の痛みの主な原因は、一時的な炎症や筋肉のこわばりです。
多くは自然に治まりますが、なかには感染や合併症のサインとして現れるケースもあります。
本記事では、抜歯後に喉が痛くなる主な原因と、放置してはいけない3つのチェックポイント、さらに自宅でできるケア方法や受診の目安をわかりやすく解説します。
不安を感じたときの参考になれば幸いです。
目次
抜歯後に喉が痛くなる3つの原因

抜歯のあとに、喉の奥がヒリヒリしたり、飲み込みづらく感じたりすることがあります。「風邪かな?」と思うようなこの痛みですが、ほとんどは一時的なものです。
原因を理解しておけば、落ち着いて対処できるようになります。
喉の痛みが起こる主な理由には、炎症が喉の近くまで広がる場合や下の親知らずの抜歯による刺激、そして長時間の開口で筋肉がこわばることなどが挙げられます。
それぞれの特徴を順に見ていきましょう。
炎症が喉の近くまで広がるケース
抜歯後の痛みで多いのが、炎症によるものです。抜歯の際には歯ぐきや骨に刺激が加わるため、傷口のまわりで軽い炎症反応が起こります。
特に下の奥歯を抜いた場合は、喉の筋肉やリンパ節が近いため、炎症が広がり喉の痛みとして感じられます。
これは、体が治ろうとする自然な反応であり、2〜3日ほどで落ち着くケースがほとんどです。
ただし、痛みが強まる、または発熱や腫れを伴う場合は感染が進んでいる可能性もあります。
下の親知らずを抜いたときに起こりやすい理由
喉の痛みは、特に下顎の親知らずを抜いた後に起こりやすい傾向があります。
下の親知らずは喉や顎の筋肉、神経のすぐ近くに位置しているため、抜歯の刺激が広範囲に及びやすいのが特徴です。
さらに、下の親知らずは埋まっているケースが多く、歯ぐきを切開して骨を削る外科的な抜歯になることも少なくありません。
このような処置のあとは、腫れや炎症が強く出やすく、喉の奥に違和感や痛みを感じることがあります。
通常は1週間ほどで症状が落ち着きますが、腫れや飲み込みにくさが強い場合は、炎症が広がっている可能性もあります。
長時間の口の開けすぎや筋肉のこわばりによる痛み
抜歯の際に長時間口を開けたままにしていると、顎から喉にかけての筋肉が疲労し、筋肉痛のような痛みが出ることがあります。
特に顎関節や喉の近くにある筋肉が緊張することで起こるもので、炎症とは異なる一過性の痛みです。
飲み込むときやあくびをしたときに痛みを感じやすいのが特徴ですが、ほとんどの場合は数日で自然に改善します。
無理に大きく口を開けず、温かいタオルをあてて筋肉をやわらげると、回復を早められます。
抜歯後の喉の痛みが治るまでの2つの目安

抜歯後の喉の痛みがどのくらい続くのか、気になる方は多いでしょう。実際には、多くのケースで自然に治まりますが、おおよその経過を知っておくと安心です。
痛みのピークは術後2〜3日ほどで、1週間前後を目安に落ち着くのが一般的です。一方で、2週間を過ぎても痛みが続く場合には、何らかのトラブルが隠れていることもあります。
それぞれの経過について、詳しく見ていきましょう。
痛みのピークは2〜3日、改善の目安は1週間前後
一般的に、抜歯後の喉の痛みや違和感は、術後2〜3日が最も強く出やすい時期です。
この頃は抜歯部分の炎症や腫れがピークを迎え、喉の奥にまで刺激が伝わりやすくなります。その後は徐々に回復に向かい、5〜7日ほどで痛みはやわらぎます。
無理をせず安静を保ち、刺激の強い食べ物や飲み物を避けることで、より早い回復が期待できるでしょう。
1週間を過ぎても違和感が少し残ることはありますが、日に日に軽くなっているなら問題ありません。時間の経過とともに落ち着くケースがほとんどです。
2週間以上続く場合に考えられること
痛みが2週間を過ぎても続く場合は、何らかのトラブルが隠れている可能性があります。
代表的なものとしては、抜歯後の傷口に血のかたまり(血餅)がうまく形成されず、骨が露出してしまうドライソケットや、傷口から細菌が入り込む感染症などが挙げられます。
このようなときは、痛みが再び強まったり、喉や顎の下が腫れたり、発熱を伴うこともあるでしょう。そのままにしておくと炎症が悪化し、治りが遅くなるおそれがあります。
痛みが長引く、悪化する、または飲み込みづらいと感じるときは、早めに歯科医院を受診することが大切です。
関連記事:親知らず抜歯後の痛みのピークは2〜3日目|抜歯後の痛みを抑える方法も解説
喉の痛みが強い・長引くときに考えられる3つのトラブル

「抜歯してから喉の痛みがなかなか引かない」「日に日に悪化している気がする」──そんな不安を感じる方もいるでしょう。
喉の痛みが強く続く場合は、単なる炎症だけでなく、別のトラブルが関係していることもあります。
主な原因として考えられるのは、傷口の感染や炎症の悪化、リンパの腫れや発熱を伴うケース、そしてドライソケットなどの抜歯後の合併症です。
それぞれの特徴を順に確認していきましょう。
傷口の感染や炎症が原因の場合
抜歯後の傷口に細菌が入り込むと、炎症が強まり喉の奥まで痛みが広がります。特に、うがいを強くしすぎて血餅が流れてしまったり、食べかすが入り込んだりすると、感染が起こりやすくなります。
感染すると、喉の痛みだけでなく腫れや発熱、膿などの症状を伴う場合もあります。
多くは抗生物質の服用で改善しますが、自己判断で市販薬を使用するのは避けましょう。
歯科医院で適切な処置を受けることが大切です。
リンパの腫れや発熱を伴うケース
注意したいのは、抜歯後の炎症が喉や顎の下にまで広がることで起こるリンパ節の腫れです。リンパ節は体の防御反応として働くため、細菌や炎症が生じると一時的に大きくなることがあります。
このような場合、喉の奥や耳の下を押すと痛みを感じることが多いでしょう。
軽い症状であれば数日で自然に落ち着きますが、発熱やだるさを伴うときは、体全体で炎症が起きているサインかもしれません。
無理をせずしっかり休養をとり、症状が強いときは早めに医師の診察を受けることが大切です。
ドライソケットなど抜歯後の合併症の可能性
ドライソケットとは、抜歯した後の穴にできた血餅が取れてしまい、骨がむき出しになる状態を指します。強いうがいや喫煙などで血餅が失われると、骨や神経が露出して強い痛みを感じます。
痛みは抜歯から3〜5日ほど経ってから悪化することが多く、喉の奥や耳のあたりまで響くのが特徴です。
この状態は自然に治ることが難しいため、歯科医院での消毒や薬剤による処置が必要になります。
放置すると痛みが長引くおそれがあるため、症状が強いときは早めの受診をおすすめします。
関連記事:【保存版】親知らず抜歯後にドライソケットにならないための5つの予防方法
自宅でできる抜歯後の喉の痛みをやわらげる3つのケア方法
抜歯後に喉が痛むと、食事や会話がつらく感じることもあります。しかし、いくつかの工夫を取り入れることで、痛みをやわらげながら回復を早めることができます。
例えば、うがいや歯磨きで口の中を清潔に保つこと、刺激の少ない食事や飲み物を選ぶこと、そしてしっかり休養をとって体を回復させることが大切です。
それぞれのケア方法を、詳しく見ていきましょう。
うがいや歯磨きで清潔を保つポイント
口の中を清潔に保つことは、痛みや炎症の悪化を防ぐために欠かせません。ただし、抜歯した直後は強いうがいを控えることが大切です。
勢いよくうがいをすると、治りを助ける血餅が流れてしまうことがあります。
翌日以降は、食後に軽く水を含んでゆすぐ程度で十分です。歯磨きをするときは、抜歯した部分を避けて優しく磨きましょう。
また、「いつから通常のうがい・歯磨きをしてよいか」は、歯科医院で確認しておくと安心です。
食事や飲み物で気をつけたいこと
抜歯後に喉の痛みがあるときは、刺激の少ない食事を意識することが大切です。
熱すぎる食べ物や辛いもの、アルコールや炭酸飲料は刺激となり、痛みや腫れを悪化させるおそれがあります。
おすすめは、冷ましたスープやおかゆ、ヨーグルトなど、やわらかくて飲み込みやすい食事です。また、水分をしっかりとることで口の中の乾燥を防ぎ、回復を助けられます。
なお、ストローの使用は避けましょう。吸う力によって血餅が取れてしまい、治りが遅くなる原因になることがあります。
安静と睡眠で回復を早める工夫
喉の痛みを早くやわらげるには、身体をしっかり休ませることが何より大切です。
抜歯後は体が治癒のために多くのエネルギーを使っているため、睡眠不足やストレスは回復を遅らせます。
就寝時は頭を少し高くして眠ると、腫れや出血を抑えるのに役立ちます。
また、長風呂や激しい運動は血流が急に上がって痛みや腫れを強めることがあるため、控えましょう。
無理をせず、体のサインに耳を傾けながらゆっくり休むことが、痛みをやわらげるいちばんの近道です。
関連記事:親知らず抜歯後の痛みに耐えられないときの対処法|おすすめの食事も紹介
抜歯後に喉が痛いときの3つの注意点と生活の工夫

抜歯後に喉が痛いときは、ちょっとした行動が回復を遅らせてしまうことがあります。痛みを長引かせないためには、日常生活のなかで気をつけたいポイントを押さえておくことが大切です。
例えば、運動や入浴、喫煙などを控えること、痛み止めや薬を正しく使うこと、そして仕事や予定を無理なく調整することが挙げられます。
それぞれの注意点について、詳しく紹介します。
避けたほうがいい行動(運動・入浴・喫煙など)
抜歯後は、血流の変化によって出血や炎症が悪化しやすい状態です。そのため、運動や長風呂、サウナなど、体温や血流を急に上げる行動は控えましょう。
こうした行動をとると、抜歯部分の血餅が崩れ、喉の痛みや腫れが強くなることがあります。
また、喫煙も回復を妨げる大きな要因です。煙に含まれる有害物質が血流を悪化させ、治りを遅らせるおそれがあります。
少なくとも抜歯後2〜3日は禁煙を意識し、可能であれば完全に控えるのが理想的です。
痛み止めや薬を使う際の注意点
抜歯後の喉の痛みが強いときは、歯科医院で処方された痛み止めを正しく使うことが大切です。指示された用量と用法を守ることで、炎症や痛みを無理なくコントロールできます。
市販薬を使用する場合は、同じ成分を重ねて飲まないよう注意しましょう。
たとえば、鎮痛薬と風邪薬を併用すると同じ成分が含まれていることがあり、思わぬ副作用を招くおそれがあります。
薬を服用する前には、処方内容や成分表を確認しておくと安心です。不安がある場合は、自己判断せず、歯科医院や薬剤師に相談するようにしましょう。
仕事や予定を調整するときの目安
抜歯後の喉の痛みや腫れは、多くの場合1週間ほどで落ち着きます。その間は無理をせず、できるだけ身体を休ませることが大切です。
特に営業や接客など、声をよく使う仕事をしている方は、数日間は会話を控えるなどの調整を行うとよいでしょう。
予定を詰め込みすぎず、余裕をもったスケジュールを組むことで、回復を早められます。
痛みや腫れが残っているうちに無理をすると、治りが遅れるだけでなく、再発の原因にもなります。焦らず、回復を最優先に考えましょう。
抜歯後に喉が痛いときに受診すべき3つのサイン

抜歯後の喉の痛みは、多くの場合は時間の経過とともに自然に治まります。しかし、なかには自己判断で放置すると症状が悪化してしまうケースもあります。
注意したいのは、痛みが強まったり発熱を伴うとき、飲み込みにくさや口の開けにくさが出てきたとき、そして腫れや膿が広がっているときです。
これらの症状が見られる場合は、早めに歯科医院を受診して原因を確認してもらいましょう。
それぞれのサインについて、詳しく説明します。
痛みが悪化する・熱が出るとき
抜歯から数日経っても痛みが強くなる、あるいは38度以上の発熱が続く場合は、感染が広がっている可能性があります。炎症が喉や顎の周辺まで及ぶと、リンパの腫れや倦怠感を伴うこともあります。
このような症状は自然に治ることが少なく、放置すると膿がたまったり、顎の下が大きく腫れたりするおそれがあります。
痛み止めで一時的にやわらいでも根本的な治療にはならないため、早めに歯科医院を受診し、抗生物質など適切な処置を受けることが大切です。
飲み込みづらい・口が開かないとき
喉の奥や顎の周辺に炎症が広がると、飲み込む動作や口の開閉に痛みを感じることがあります。これは、炎症によって筋肉が腫れ、動かすたびに刺激が加わるためです。
軽い症状であれば数日で自然に回復しますが、飲み込むのがつらい、または口を開けづらいほどの痛みがある場合は注意が必要です。
感染が深い部分まで進行している可能性があるため、早めの診察を受けるようにしましょう。
腫れや膿が広がっているとき
頬や顎の下、喉のあたりまで腫れが広がっている場合は、細菌感染が強く進行しているサインです。
鏡で見て歯ぐきが白っぽくなっていたり、口の中に膿が見えたりしたときも注意が必要です。
このような状態では、抗生物質の服用や消毒などの処置が欠かせません。
放置すると炎症が喉の奥や気道付近まで広がるおそれがあるため、できるだけ早く歯科医院を受診しましょう。
また、痛みや腫れが急に強まった場合は、休日であっても救急対応のある医療機関を受診することをおすすめします。
関連記事:虫歯治療後に歯茎が腫れた!原因と正しいケア・受診の目安を解説
まとめ|抜歯後の喉の痛みは多くが一時的、悪化時は早めに受診を

抜歯後の喉の痛みは、多くの場合が一時的なもので、数日から1週間ほどで自然に回復します。
炎症や筋肉のこわばりによる一過性の痛みであることがほとんどですが、痛みが強まったり長引いたりする場合は、感染やドライソケットなどの合併症が隠れていることもあります。
口の中を清潔に保ち、刺激の少ない食事を心がけ、体を休めることで回復を早められます。
一方で、痛みや腫れが悪化したり、発熱や飲み込みにくさを感じたときは、早めに歯科医院を受診することが大切です。
正しいケアと早めの対応によって、抜歯後の不安を減らし、スムーズな回復につなげていきましょう。
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この記事を監修した人

歯科ハミール本院 院長 赤崎 絢
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