「抜歯から1時間たっても血が止まらない…大丈夫?」
「ガーゼが無くて止血のやり方がわからない」
抜歯後も血が止まらない状態が継続していると、不安になってしまうものですよね。
本記事では、抜歯後に血が止まらない原因や対策、病院の受診目安についてご紹介します。
自宅でもできる対処方法や相談窓口、かかる費用などについても網羅し、出血が止まらないと不安を覚えている人に最適です。
ぜひ、最後まで読んでみてください。
この記事でわかること
- 正常な出血量と危険サインを示すチェック表
- ガーゼが無いときに試せる3ステップ止血マニュアル
- 夜間・休日の受診判断フローと費用の目安
目次
抜歯後に出血が止まらない3つの原因

抜歯後に出血が止まらない主な原因は下記の3つです。
- 圧迫不足
- 傷口刺激
- 血行促進
これらの原因を自宅で避けるようにすれば、再出血の大半は防げるでしょう。
止血がしっかりできていない
厚いガーゼを奥歯で30分噛まないと出血は長引きます。
噛む圧力が弱いと、血餅(けっぺい:血液が凝固してできる塊)が歯槽骨へ貼り付かず、剥がれて再び血がにじんでしまうためです。
たとえば、一枚だけの薄いガーゼを前歯で軽く噛むと内部の動脈から血が滲み続けてしまいます。
傷口を触った・強いうがいをした
抜歯後の傷口にできる血餅は、傷を保護して治癒を促す役割を持っています。
血餅は、24時間かけてゼラチン状から膜へ変わります。舌や指のわずかな圧力でも崩れ、傷面が露出してしまうので気を付ける必要があります。
鏡で見ようと舌先で探る動作や、洗口液で勢いよくうがいによって血餅が剥がれて再出血してしまう恐れがあるのです。
対策
- 舌を抜歯側へ寄せない
- 洗口は翌日以降に軽く1回
- 血が気になっても指で触らない
触らない・ゆすがない。この2点を守りましょう。
長風呂・飲酒・激しい運動をした
湯船にゆっくり浸かったり、飲酒をしたり、激しい運動をしたりすると、体中に酸素を供給する必要が出てきます。
結果として、酸素を体中に運ぶために血の巡りが良くなり、血が止まらない状態になる恐れがあるでしょう。
関連記事:抜歯しないといけない歯を放置したら…10年後の怖いリスク
抗凝固薬・持病・術後トラブルの可能性と注意点

ワーファリンやバイアスピリンを飲んでいる、糖尿病で血流が多い、縫合が甘いなどの理由があると、出血は長引いてしまう恐れがあります。
体質・薬剤・持病の影響
抗凝固薬(ワルファリン・DOAC)や抗血小板薬(低用量アスピリン)を飲むと血が固まりにくく、抜歯後は通常15分で止まる出血が30分以上続く場合が多いです。
肝硬変・血友病・コントロール不良高血圧も、止血が遅延してしまう原因となってしまう恐れがあります。
自己判断で休薬せず、ガーゼ圧迫→30分声超えの圧迫や2回目の圧迫後もしたたるような出血が止まらない場合は、速やかに歯科へ連絡しましょう。
ドライソケット・感染症
ドライソケットとは、抜歯後の傷に血餅が失われ骨がむき出しになり、傷に強い痛みがある状態のことです。
抜歯後 3日目以降に再び痛みが出てきて、傷口から悪臭が出るならドライソケットの疑いがあります。
症状 | 特徴 |
ズキズキした痛みが強まる | 鎮痛薬が効きにくい |
強い口臭・不快味 | 血餅消失で感染しやすい |
「術後 3〜5日で激痛が長引く」「骨が露出していてにおいが出る」という症状が出たら、注意が必要です。
抜歯時に太い血管が損傷した
厚労省通知(参考文献:歯科診療報酬点数表に関する事項)によると、圧迫で止まらない抜歯後出血を再縫合など医師処置が必要な異常と示しています。さらに、
- ガーゼ交換直後に血が滴る
- 温かい血液が口に広がる感覚
- 頬が急に紫色に膨らむ
これら三徴候は危険な後出血のサインです。
太い血管が損傷している場合、自己対処での止血が難しいでしょう。ただちに歯科または救急にて、止血処置を受けてください。
関連記事:親知らず抜歯後にやってはいけないこと7選|抜歯後におすすめの食事も紹介
抜歯後に血が止まらないのは普通?正常な出血と危険サイン

抜歯後、どれくらいのあいだ血が止まらないものなのか、量はどれくらい出るものなのかなど、正常と危険の見極めサインについて、この項目ではお伝えします。
正常な出血量と時間
抜歯後、唾液へ血が少し混じる程度の出血は正常範囲です。
数時間のにじみ出血は問題ありません。
抜歯後に出血ってどれくらい?危険チェックリスト
危険レベルは、量・痛み・腫れ・熱の四項目で判断します。
- 出血量:ガーゼ全面浸透や口からしたたる
- 痛み:拍動して鎮痛薬が効かない
- 腫れ:翌日になっても腫れが引かない(大きくなる)
- 発熱:37.5℃以上が続く
上記四項目のうち二つ以上当てはまれば、自己処置に頼らず専門家へ相談してください。
放置すると傷口からの感染へと進んでしまう恐れがあります。
関連記事:親知らず抜歯後の痛みのピークは2〜3日目|抜歯後の痛みを抑える方法も解説
抜歯後に血が止まらないときの歯科クリニック受診の目安

受診の目安はガーゼの染まり方と経過時間で判断します。
経過時間 | ガーゼの染まり具合 | 判定 |
〜30分 | 一部が淡い赤 | 経過観察 |
30分〜2時間 | 半分以上が薄い赤 | 経過観察 |
圧迫30分後も滴下 | 全面が鮮紅 | 電話相談・受診 |
滲む=様子見、滴下が続く=電話相談・受診と考えましょう。
圧迫を30分行なった後でもガーゼ全体が鮮紅で血が滴る場合は、再び圧迫しながら歯科へ連絡してください。
夜間・休日:救急を受診すべきタイミング
夜間は診療室が閉まるため判断が難しくなります。下表で危険度を把握し、まず救急相談窓口へ電話しましょう。
圧迫時間 | 出血量・症状 | 推奨行動 |
30分以内 | ガーゼ半分淡赤 | 経過観察 |
30〜60分 | 全面濃赤 | 救急相談 #7119 |
60〜120分 | 滴下・拍動痛 | 救急相談 #7119 |
120分超 | 持続滴下 | 救急外来 |
- 抜歯直後は30分圧迫で止まるのが標準です。
- 1時間たっても多量出血が続くようなら、医療機関に連絡しましょう。
- 2時間以上続く出血やしたたるくらいの出血量がある場合、夜間でも速やかな受診をおすすめします。
24時間相談窓口
- #7119(救急安心センター)
不安があれば、抜歯をおこなった日時・血が止まらない状態がどれくらい続いているか・出血量・服用している薬などをメモした上で、相談窓口や救急外来へ連絡してください。
関連記事:【医師監修】親知らず抜歯後に気をつけること|抜歯前に知っておきたいことも解説
抜歯後に血が止まらない時どうすれば良い?自宅での対処方法

焦らず、圧迫→冷却→安静の順に動きましょう。
- 厚いガーゼで30分圧迫
- 頬を冷却
- 枕を高くして安静に
上記の流れを詳しく確認していきます。
①基本の圧迫止血|ガーゼ・ティッシュの正しい噛み方
ガーゼを奥歯で30分噛んでおくと、大抵は止まります(参考文献:一般社団法人 新潟県歯科医師会)。均一な圧力が血管を閉じ、血餅を固定するためです。前歯での軽い噛みでは出血が続きます。
ガーゼがなければ、清潔なティッシュ8枚を折り重ねてビニール袋で包んでください。繊維が傷口に残らず、厚みによって圧力を保てます。
奥歯で30分噛み続け、濡れたら一度だけ交換しましょう。厚みが足りないと滲み続けるため枚数を減らさないでください。ガーゼを入手次第、切り替えるとさらに安定します。
噛んでいる際は話さずに、唾液は飲み込むようにしましょう。
②止血を助ける追加テク|頬の冷却・枕を高くする
抜歯した箇所の頬を、タオルで包んだ保冷剤を当てて冷却してください。
枕の下にバスタオルを挟んで高さを出して、血流を抑えましょう。
寝るときの姿勢は仰向けが望ましいです。
うつ伏せになったり、暖房器具で顔を温めたりするのは避けるのが良いでしょう。
関連記事:親知らず抜歯後のチョコレートはいつから?安全な時期とおすすめの食事も解説
再出血を防ぐセルフケアと生活・食事のコツ

血餅を守り、体を温め過ぎず、栄養で回復を促すのがポイントです。三方向から整えれば再出血のリスクはぐっと下がります。具体策を見てみましょう。
血餅を保護
血餅(けっぺい)は傷口をふさぐ天然パッチです。触らず、乾かさず、圧迫し過ぎない三原則を守れば剥がれにくくなります。
- 舌や指でこすらない
- 24時間は強いうがいを控える
- 口呼吸を避け保湿スプレーで乾燥対策
- サイズが大きく不安な場合は写真を撮り、歯科で確認
血餅が取れた・黒く固まったと感じたときは早めに受診することをおすすめします。
抜歯後の食事
摂取開始は麻酔が完全に切れてからにしてください。噛む側を抜歯したほうとは反対にし、体温と同じ程度の温度の食べ物をゆっくり飲み込みましょう。
避けたい食品
- 硬いナッツ類
- 辛味・酸味が強い物
- 高温のスープ
止血促進に役立つ栄養素
- ビタミンK(凝固因子を作り止血をサポート):納豆、ほうれんそうなど
- 鉄(酸素運搬を保ち貧血を防ぐ):レバー、あさりなど
- タンパク質(新しい組織の材料になる):豆腐、卵など
抜歯後の歯磨きやうがいなどの口腔ケア
24時間は抜歯した側のブラッシングは慎重にし、うがいは控えめを心がけてください。血餅を動かさない範囲で清潔を保ちます。
- 抜歯当日は反対側だけ柔らかい歯ブラシで軽く磨く
- 24時間後に抜歯側も磨く。ただし、傷口へ毛先を当てない
- 低刺激のうがい液で一回ゆすぎ、強く吐き出さない
電動ブラシ・舌ブラシは創部刺激が大きいため、傷が閉じるまで控え、フロスは完全に傷が閉鎖してから再開しましょう。
入浴・運動・アルコール
抜歯当日は湯船・激しい運動・飲酒を控えるのが鉄則です。
行為 | 当日の可否 | 再開目安 |
湯船・サウナ | × | 24時間後に短時間 |
激しい運動 | × | 7日後から |
軽い散歩 | △(様子見) | 48時間後 |
飲酒 | × | 72時間後に少量 |
喫煙や熱い飲み物も創部を刺激しやすいので数日は控え、出血や痛みが無いことを確認してから再開しましょう。
外出時に抜歯後に血が止まらない場合の対策
抜歯後はできるだけ安静にしておきたいものですが、やむを得ず外出する場合もあるでしょう。
その際は、口元ケアと応急セットを準備しておくのがおすすめです。仕事や用事などで外出する際の不安が減ります。
目立たない止血&口臭ケア
- 小さく折ったガーゼをマスク内に忍ばせる
- 無香タイプの口腔保湿スプレー
- ノンアルコールうがい液の携帯
- 小型保冷剤を保温バッグで持参
人と会う前は一度口を軽くすすぎ、ガーゼを新しい物へ替えておくと安心です。
関連記事:【現役歯科医師が監修】親知らずの抜歯後に体調が良くなったと感じること6選
次回、抜歯後出血止まらないトラブルを防ぐための準備

抜歯前のひと手間で出血の不安は大幅に減ります。
項目 | 中身・確認内容 |
止血キット | ガーゼ10枚/ティッシュ20枚/小型保冷剤/低刺激フッ素入り歯磨き粉 |
服薬申告 | ワーファリン・バイアスピリン・サプリ・市販薬の一覧を作成し初診票へ転記 |
事前確認・相談 | 圧迫時間の目安/ガーゼ追加の有無/夜間連絡先/再診費用の概算/縫合希望の可否 |
抜歯前に服用している薬についてや、以前も血が止まらない状態になったことなどを申告しておけば、医師は出血リスクを把握しやすくなります。帰宅後はキットを手元に置いておくと、落ち着いて対応できます。
関連記事:【専門家が解説!】親知らず抜歯後に腫れが残る日数とは?|腫れやすい人の特徴も解説
まとめ【抜歯後に血が止まらない時は専門家に相談を】
最後にもう一度、抜歯後に血が止まらない場合の対応についてまとめておきます。
- 30分圧迫しても滴下する鮮紅色の出血は異常。新しいガーゼで再圧迫し、続けば歯科へ連絡
- 抗凝固薬・肝疾患・血友病などがあると止血が長引くため、自己判断で休薬せず必ず主治医に報告
- 頬の冷却と枕を高くする姿勢で血行を穏やかにし、熱い風呂・飲酒・激しい運動は72時間避ける
- 夜間や休日に出血が続く時は救急安心センター「#7119」へ電話し、必要なら救急外来を受診
- 後出血は極めてまれに重篤化するため、顔色不良やめまいを伴う場合は119番をためらわない
ガーゼ圧迫で止まらない、または顔色不良やめまいを伴う症状が出たときは迷わず専門家へ相談してください。早い連絡が安心と回復への近道です。
本記事が抜歯後の不安を減らし、適切なセルフケアと受診判断のお役に立てばうれしいです。
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