舌で歯を押したときに痛みを感じても、見た目に異常がないと「そのうち治るだろう」と考えてしまう方も多いでしょう。
しかし、この痛みは歯ぐきの炎症や歯の根のトラブルなど、放置すると悪化する症状かもしれません。
本記事では、舌で歯を押すと痛いときに考えられる主な3つの原因と、自宅でできる応急ケアの方法、さらに歯科医院を受診する目安についてわかりやすく解説します。
早めの対応が、健康な歯を守る第一歩となるでしょう。
目次
舌で歯を押すと痛いのはなぜ?3つの主な原因を解説

舌で歯を押したときにチクッと痛みを感じると、不安になりますよね。
実はその痛みの多くは、歯ぐきの炎症や歯の根のトラブル、噛みしめによる負担など、口の中で起きているさまざまな変化が関係しています。
放置すると悪化することもあるため、原因を正しく理解し、早めに対処することが大切です。
歯ぐきの炎症や歯周病が原因のケース
舌で押したときに痛みを感じる理由のひとつが、歯ぐきの炎症です。
歯と歯ぐきの間に汚れや細菌がたまると、軽い炎症が起こり、わずかな刺激でも痛みとして感じるようになります。
初期の段階では、歯ぐきが赤く腫れたり、歯みがきの際に出血が見られたりするのが特徴です。
この状態を放置すれば、炎症が歯を支える骨にまで広がり、歯周病へと進行するおそれがあります。
悪化を防ぐためには、早めに丁寧なブラッシングを行い、歯科医院でのクリーニングを受けておくことが大切です。
根の先に膿がたまる「根尖性歯周炎」のケース
歯の根の先に膿がたまる根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)も、舌で押すと痛む原因としてよく見られるトラブルです。
虫歯が深く進行して神経まで達したり、過去に治療した歯の根の奥に細菌が残っていたりすることが原因で起こります
炎症が根の先に広がると、見た目は普通でも内部で圧がかかり、押すとズキッとした痛みを感じることがあります。
放置すると膿がたまり、歯ぐきに白い腫れが出るケースも少なくありません。
この症状は自然に治ることはないため、歯科医院で根管治療(歯の中の消毒・洗浄)を受ける必要があります。
歯のひび割れや噛みしめによる痛みのケース
強い力で噛んだり、歯ぎしりや食いしばりを続けたりすると、歯に細かなヒビが入ります。
この「歯の微小なひび割れ」は、目では確認しづらくても、舌や指で押すと鋭い痛みを感じる見逃されやすい症状です。
さらに、ストレスや緊張から無意識に噛みしめていると、歯を支える歯根膜に負担がかかり、炎症を起こすこともあります。
症状が軽い場合は、マウスピースで力を分散させるなどの処置で改善が見込めますが、ひびが深いと治療が必要になります。
痛みが続くときは我慢せず、早めに歯科医院で診察を受けましょう。
関連記事:歯茎を押すと痛いときの4つの原因と治療法|応急処置や受診の目安も解説
奥歯を押すと痛いときに考えられる2つの原因

奥歯を押したときにズキッと痛むと、食事や歯みがきのたびに気になります。
この痛みの多くは、噛む力のかかり方や詰め物・被せ物のわずかなズレなど、日常の小さな要因によって起こります。
放置すると炎症が広がるおそれがあるため、早めの対処が大切です。
ここからは、奥歯を押すと痛いときに考えられる代表的な2つのケースを紹介します。
噛む力が集中しやすい奥歯のトラブル
奥歯は食べ物をすりつぶす役割を担っており、ほかの歯よりも強い力がかかります。
そのため、歯の根や周囲の組織に負担がかかり、炎症や痛みを起こしやすい部分です。
特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は、奥歯に過度な圧力が加わり、歯根膜というクッション部分に炎症が生じます。
この状態になると、舌で押したり噛んだりするだけで痛みを感じるようになるでしょう。
歯科医院では、噛み合わせの調整やマウスピースの作成などにより、歯への負担を軽減する治療が行われます。
被せ物や詰め物のズレが引き起こす痛み
治療した歯にかぶせ物や詰め物がある場合、その高さや位置がわずかに合っていないだけでも痛みを感じることがあります。
特に奥歯は噛むたびに強い力がかかるため、少しのズレでも炎症を起こしやすいのが特徴です。
また、古い詰め物の下で虫歯が再発している場合もあり、見た目では分からないケースも少なくありません。
このようなときは自分で判断せず、歯科医院で噛み合わせの確認やレントゲン検査を受けることが大切です。
早めに調整・修復を行えば、痛みが長引く前に改善できることが多いでしょう。
前歯を押すと痛いときに考えられる2つの原因

前歯を押したときにチクッとした痛みや違和感を覚えると、気になる方も多いでしょう。
前歯は見た目にも影響する部分のため、痛みを放置すると悪化や審美面の変化につながることがあります。
主な原因としては、歯の根の炎症のほか、打撲・歯ぎしり・強いブラッシングによるダメージなどが挙げられます。
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
軽い刺激でも痛みが出やすい歯根の炎症
虫歯が深く進行した場合や、過去に治療した歯の神経が感染を起こした場合には、歯の根の先で炎症が起こります。
歯根の炎症が起きると、舌で軽く押しただけでもズキッと痛みを感じたり、周囲の歯ぐきが腫れたりします。
前歯は骨が薄く、炎症の影響が表面に出やすいのが特徴です。
放置すると膿がたまり、歯ぐきに白いできもののような腫れが出ることもあります。
自然治癒は難しいため、歯科医院で根の中を洗浄・消毒する根管治療が必要になります。
打撲・歯ぎしり・強いブラッシングによるダメージ
転倒やスポーツでの衝撃などによる打撲も、前歯の痛みの原因になります。
一見問題なさそうでも、内部で神経が傷ついていることがあり、時間が経ってから痛みが出るケースも少なくありません。
また、歯ぎしりや噛みしめ、力の入れすぎたブラッシングによっても、歯と歯ぐきの境目がダメージを受けることがあります。
このような場合は、まず安静を心がけ、患部に余計な力を加えないようにすることが大切です。
歯の色が変わったり、冷たいものがしみたりする場合には、早めに歯科医院を受診しましょう。
関連記事:片方の頬が腫れて押すと痛いときは何科へ?3つの判断基準
放置するとどうなる?注意したい3つのサイン

「押すと少し痛いだけだから」と様子を見てしまう方もいるでしょう。
しかし、そのままにしておくと、炎症が広がって歯を失う原因になるかもしれません。初期の段階で気づければ、治療の負担を抑えることも可能です。
ここでは、放置すると悪化するサインをわかりやすく紹介します。
痛みが長引く・腫れるなどの危険なサイン
歯を押したときの痛みが数日経ってもおさまらない場合は、内部で炎症が進んでいる可能性があります。
特に、歯ぐきが腫れたり、噛んだときに強い痛みを感じたりする場合は注意が必要です。
こうした症状は、根の先に膿がたまる根尖性歯周炎や歯周病の悪化によって起こることが多く、放置すると骨や周囲の組織に炎症が広がるおそれがあります。
我慢できる程度でも、長引く痛みは自然に治ることはありません。早めに歯科医院で検査を受けましょう。
見た目に異常がなくても注意すべき症状
鏡で見ても腫れや虫歯の穴がないのに痛む場合も、内部で炎症や感染が起きている可能性があります。
歯の神経が死んでいたり歯根が割れていたりするケースでは、外見に変化が出にくいため、発見が遅れがちです。
また、痛みがなくなっても「治った」とは限りません。炎症が慢性化し、一時的に痛みが引いているだけのこともあります。
見た目に問題がなくても、「押すと違和感がある」や「時々ズキッとする」と感じたら、歯科医院で診察を受けると安心です。
早期受診で回避できるトラブル
歯の痛みは、早い段階で治療を受ければ、削る範囲や通院回数を最小限に抑えられます。
一方で、放置して炎症が広がると、神経の治療や抜歯が必要になることもあります。
また、痛みが続く状態は食事や睡眠の質を下げ、日常生活のストレスにつながるでしょう。
「少し様子を見よう」と先延ばしにせず、違和感を覚えた時点で歯科医院に相談することが大切です。
関連記事:虫歯で痛いときの原因と応急処置5選|放置リスクも徹底解説
自宅でできる3つの応急ケアと痛みをやわらげる工夫

歯を押すと痛むものの、すぐに歯科医院へ行けない場合もあるでしょう。
そのようなとき自宅でできる正しいケアを知っておくと、痛みの悪化を防ぎ、落ち着かせられます。
ここでは、応急的に取り入れられる3つの方法を紹介します。
口内を清潔に保つ工夫や、冷やし方・痛み止めの使い方、そして歯に刺激を与えない過ごし方を押さえておきましょう。
口の中を清潔にして炎症を悪化させない
痛みがあるとつい歯みがきを控えたくなりますが、汚れを放置すると炎症が悪化します。
やさしく歯ブラシを当てて、歯と歯ぐきの間にたまった汚れを落とすようにしましょう。強くこすらず、柔らかい歯ブラシを使い、痛みのある部分は軽くなでる程度で構いません。
また、ぬるめの塩水や殺菌効果のあるうがい薬で口をゆすぐことも有効です。
清潔な状態を保つことが、細菌の増殖を防ぎ、回復を促すポイントになります。
冷やす・痛み止めを使うときの正しい方法
歯ぐきが腫れている場合や、ズキズキと脈打つような痛みがあるときは、冷やすことで一時的に炎症を抑えられます。
ただし、冷やしすぎると血行が悪くなるため、タオルに包んだ保冷剤を頬の外側から5〜10分あてる程度が目安です。
それでも痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を正しく使用しましょう。
薬で痛みを抑えても原因は残っているため、症状が落ち着いたら必ず歯科を受診することが大切です。
噛む・触るなど歯に刺激を与えない過ごし方
痛む歯で硬いものを噛んだり、舌や指で押したりするのは避けましょう。刺激を与えると、炎症が悪化して痛みが強くなるおそれがあります。
食事は柔らかいものを選び、痛みのない側で噛むように意識します。
また、就寝中の食いしばりが原因の場合は、リラックスできる入浴や深呼吸などで緊張をほぐすことも効果的です。
無理に動かそうとせず、安静を保つことが回復を早めるポイントです。
関連記事:
痛みを繰り返さないための3つの予防と生活習慣の見直し方

痛みが落ち着いても、「また同じところが痛くなったらどうしよう」と不安になる方は少なくありません。
一度治っても、ケアや生活習慣を見直さなければ再発することがあります。
ここでは、痛みを繰り返さないために意識したい3つのポイントを紹介します。
正しい歯みがきと定期検診で早期発見を習慣にし、噛みしめや歯ぎしりを減らすリラックス習慣を取り入れることが大切です。
さらに、バランスの取れた食生活とストレスケアを意識することで、歯の健康を長く保つことにつながります。
正しい歯みがきと定期検診で早期発見を習慣に
歯を守るには、毎日の歯みがきが欠かせません。
歯ブラシは毛先が広がっていない柔らかめのものを使い、歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨くことを意識しましょう。
また、歯みがきだけでは落としきれない汚れを除去するために、デンタルフロスや歯間ブラシを併用するのがおすすめです。
さらに、忘れてはいけないのが歯科医院での定期検診です。
痛みが出る前にクリーニングや噛み合わせのチェックを受けておくことで、早期発見と早期治療につながります。
噛みしめや歯ぎしりを減らすリラックス習慣
寝ている間や集中しているときに、無意識に噛みしめてしまう方は少なくありません。
噛みしめや歯ぎしりが続くと、歯や顎に大きな負担がかかり、押したときの痛みや知覚過敏を引き起こします。
日中は上の歯と下の歯を離すことを意識し、夜間はマウスピースの使用で力を分散させるのが効果的です。
また、ストレスが原因で歯ぎしりが強くなることもあるため、深呼吸や軽いストレッチ、温かいお風呂などで体をゆるめ、リラックスする時間を意識的に取りましょう。
バランスの取れた食生活とストレスケアで歯を守る
栄養の偏りやストレスの蓄積は、歯ぐきや免疫力に大きく影響します。
カルシウムやビタミンC・Dを多く含む食品を意識的に取り入れ、歯と歯ぐきを強く保つことが大切です。
また、強いストレスは噛みしめやホルモンバランスの乱れを招き、歯のトラブルを悪化させる原因にもなります。
規則正しい生活と心身のケアを心がけることで、歯の健康を長く維持できます。
「予防こそ最大の治療」という意識を持ち、日々の習慣を整えていきましょう。
関連記事:痛みがなくても進んでいる?虫歯の進行速度と予防法を徹底解説
まとめ|舌で歯を押すと痛いときは早めの受診が安心

舌で歯を押すと痛い症状は、軽く見えても内部で炎症が進んでいる場合があります。
歯ぐきの腫れや根の膿、噛みしめによる炎症など原因はさまざまですが、放置すると悪化して治療が長引くおそれがあります。
痛みを感じたときは、まず口内を清潔に保ち、刺激を避けながら安静に過ごすことが大切です。
ただし、応急ケアはあくまで一時的な対処にすぎません。痛みが続く、噛むと違和感がある、腫れがひかないといった場合は、早めに歯科医院で診察を受けましょう。
早期の受診が、歯の健康を維持するために効果的です。
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この記事を監修した人

歯科ハミール本院 院長 赤崎 絢
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