「治療したはずの差し歯がまた痛む……もしかして失敗?」
そんな不安が頭をよぎると、食事のたびに気持ちまで落ち着かなくなりますよね。
差し歯の痛みには、数日で自然に治まるものもあれば、放置すると抜歯が必要になるケースもあります。落ち着いて対処するためには、まず原因と対処法を正しく知ることが大切です。
本記事では、差し歯が痛む主な理由、今日からできる応急ケア、そして歯科医院を受診すべきタイミングについてわかりやすく解説します。
「どう対処したらいいのかわからない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
差し歯が痛い原因は?考えられる主なトラブル

差し歯が痛むと、治療したのにどうしてだろうと不安になる方もいるでしょう。
痛みの背景には、噛み合わせのズレや虫歯の再発、歯根のダメージや歯周組織のトラブルなど、いくつかの要因が潜んでいます。
まずは主な原因を整理し、症状の理解につなげましょう。
噛み合わせが合っていないときの痛み
差し歯を入れたあと、少しの違和感ならそのうち慣れると放置してしまうかもしれません。しかし、噛み合わせがわずかにずれているだけでも、痛みや違和感が長く続くことがあります。
特に神経を抜いた歯は刺激を感じにくいため、気付いたときには負担がすでに蓄積しているケースも少なくありません。
噛む力が均等にかからない状態が続くと、被せ物や歯茎、歯根に過度の負担がかかり痛みを引き起こします。
「噛むと重い」や「響く感じがある」などの変化があれば、歯科医院で噛み合わせの調整を受けることが大切です。
虫歯が再発している(被せ物の下で進行)
被せ物をしている歯でも、歯と素材の間にごく小さな隙間が生じると、内部で虫歯が進みます。
接着剤の劣化や歯茎の変化によっても細菌が入り込み、見えない場所で進行するのが特徴です。
特に神経を抜いた歯は痛みを感じにくいため、症状に気付いたときには状態が悪化しているケースも少なくありません。
「治療した歯なのに痛む」や「冷たいものがしみる」といった変化があれば、再発の可能性が高いでしょう。
歯の根っこが割れている・病気になっている
差し歯を支える歯根は、神経を抜いたり土台を作るために削ったりしたことで、強度が弱まっています。噛む力が集中すると、小さなヒビや割れが起きやすい状態です。
歯根にヒビが入ると、噛む刺激で痛みが出ます。さらに根の先に細菌が入り込むと、根尖病変と呼ばれる腫れや鈍い痛みが生じます。
悪化を防ぐためには、早い段階で歯科医院の診察を受けることが重要です。
歯周病が進行している
たとえ差し歯でも、周囲で歯周病が進むと歯茎や骨が弱り、天然歯と同じように痛みが出ます。土台となる歯や歯茎の状態が乱れることで被せ物の支えが不安定になると、痛みや違和感、グラつきにつながります。
歯周病は初期症状がほとんどないまま進むため、痛みや揺れを感じる頃には進行しているケースがほとんどです。早めのチェックが、差し歯の寿命を守るポイントです。
関連記事:歯の神経が痛い!虫歯がないのにズキズキする原因と治し方
差し歯の痛みは普通?治る痛みと危険なサインの見分け方

差し歯を入れた後に痛みが続くと、「このまま治らなかったら……」と不安になる方も少なくありません。自然と落ち着く痛みがある一方で、放置すると悪化する痛みも存在します。
慌てず対処するために、痛みの違いを確認しておきましょう。
治療直後によくある一時的な痛み
差し歯を入れた直後は、削った部分が敏感になったり、歯茎が炎症を起こしたりして軽い痛みが出るのが一般的です。噛むときに違和感があっても、多くは数日〜1週間ほどで落ち着きます。
ただし、痛み止めが欠かせないほどつらい場合や、日ごとに改善が感じられない状況では単なる経過とは言い切れません。
痛みが弱まってきているか、食事がしやすくなっているかが、回復の目安です。
数日続く・悪化する痛みが危険な理由
治療後しばらくして痛みが出てきた場合や、1週間以上強い痛みが続く場合は注意が必要です。被せ物の不適合や虫歯の再発、歯根の病気など、内部でトラブルが進行している可能性があります。
噛むと響くような痛みが続いたり、歯茎の腫れが見られたりする場合は炎症が大きくなっているサインです。放置すると治療が複雑化し、最終的に抜歯が必要になることもあるため、早めに歯科医院で検査を受けましょう。
早めの受診が必要な症状とは?
治療後、痛みが少しずつ弱まっている場合は自然な経過と判断できます。一方で、痛みが徐々に強くなる、頬まで違和感が広がるなどの症状があるときは注意が必要です。
冷たい物や熱い物で強くしみたり、歯茎から膿が出てきたりする場合は歯根の病気が進んでいる可能性があります。また、噛みにくさや歯が浮くような感覚が出たときも早めの受診が欠かせません。「様子を見よう」で済ませず、状態を確認することが大切です。
関連記事:歯茎を押すと痛いときの4つの原因と治療法|応急処置や受診の目安も解説
差し歯が痛いときの応急処置と注意点

差し歯が痛むと、日常生活にも影響が出ます。そのようなときに痛みを和らげる応急ケアを行えば、気持ちが楽になるでしょう。以下では、炎症を和らげる方法や薬の使い方、避けたい行動について解説します。
冷やして痛みを落ち着かせる方法
炎症によって血流が過剰に増えると、差し歯の痛みは強くなります。そのようなときは、頬の外側を冷やすと炎症が落ち着き、痛みがやわらぎます。
保冷剤や冷たいタオルは直接肌に当てず、薄い布で包んで短時間ずつ当てましょう。冷やした状態が続きすぎると歯根を刺激して逆効果になる場合があるため、冷やす時間と外す時間を交互に繰り返す方法が適切です。
市販の痛み止めでできること
強い痛みがあるときには、市販の鎮痛薬を使うことで食事や睡眠の負担を減らせます。ただし、薬だけでは根本的な原因は解決しません。
効き目が切れるたびに飲み続ける状況が続く場合は、歯の内部でトラブルが進んでいる可能性があるため、早めに歯科医院へ相談しましょう。
日常生活で避けたほうがいいこと
差し歯まわりの炎症は温めると悪化しやすく、長時間の入浴や飲酒、激しい運動は痛みが強まる原因になります。また、硬い食べ物や片側だけで噛む癖も、歯根や歯茎への負担が大きくなるため注意が必要です。
やわらかい食事を選び、痛みのある側を避けるなど、無理のない範囲で工夫しましょう。応急ケアを行っても改善が感じられない場合は、内部でトラブルが進んでいる可能性があるため、受診を先延ばしにしないことが大切です。
関連記事:歯が痛い すぐに歯医者に行けない人のための応急ケアと受診目安6選
差し歯の痛みで歯医者に行くべきタイミング

差し歯が痛いとき、「もう少し様子を見ても大丈夫だろうか」と迷ってしまうかもしれません。受診のタイミングを見極められれば、不要な痛みや大きな治療を避けやすくなります。
様子を見ても問題ないケースと早めに受診が必要なサインを解説します。
様子を見ても大丈夫な痛みの見分け方
差し歯を入れた直後で痛みが少しずつ弱まっている場合は、自然な経過です。硬い物を噛んだときに多少の違和感があっても、治療後1〜2日の軽い腫れや響きはよく見られる症状です。
ただし、日が経つごとに楽になってきていると実感できることが前提です。改善が感じられるかどうかが、様子を見てもよいか判断する一つの目安になります。
「すぐ相談」が必要なサイン
痛みが長引いたり、日を追うごとに強くなる場合は注意が必要です。噛むと鋭く痛む、冷たい物や熱い物で強くしみる、歯茎が腫れる、膿のような液が出る、差し歯がぐらつくといった状態は、早めに受診すべきサインです。
被せ物の適合不良や虫歯の再発、歯根のトラブル、歯周病の進行が隠れている可能性があるため、歯科医院の受診をおすすめします。
放置してしまった場合に起こること
痛みを我慢して放置すると、歯根や骨にまでダメージが広がる恐れがあります。被せ物の下で虫歯が進んでいたり、歯根にヒビが入っていたりする場合は、最終的に抜歯が必要になる可能性が高まります。
抜歯となると、その後の選択肢はブリッジや入れ歯、インプラントなどです。治療期間が長くなり、治療費の負担も大きくなります。症状が悪化する前に、歯科医院で確認することが大切です。
関連記事:虫歯の初期に出る痛みを見逃さない6つのチェックポイント
差し歯を長持ちさせるための正しいケアと注意点

差し歯は、日々のケア次第で寿命が大きく変わります。清掃状態や噛み合わせ、生活習慣がトラブルのリスクに影響するためです。
以下では、差し歯をできるだけ長く快適に保つためのポイントを紹介します。
毎日のていねいなケアで防げるトラブル
差し歯のまわりは、汚れがたまりやすい場所です。磨き残しがあると、被せ物と歯ぐきの境目から細菌が入り込み、虫歯や歯周病を引き起こします。
やわらかめの歯ブラシで境目を丁寧に磨き、デンタルフロスや歯間ブラシで細かい部分まで清掃しましょう。日々のセルフケアが習慣として定着すれば、差し歯を長く快適に保てます。
定期チェックの重要性
差し歯は入れたら終わり、ではありません。長く安定して使い続けるためには、治療後も定期的なチェックが欠かせません。被せ物の適合状態や歯ぐきの健康、噛み合わせの変化は、年に1〜2回のチェックが推奨されています。
もし接着がゆるんでいたり歯ぐきが下がって隙間が生じたりしていれば、早期対応によって大きなトラブルを回避できます。
なお、差し歯の寿命には素材も影響し、保険適用の素材だと7〜10年、自費素材だと10年以上が目安です。
差し歯の寿命を縮める癖や生活習慣
差し歯の寿命は、無意識の癖や生活習慣によって左右されます。片側だけで噛む癖や、夜間の歯ぎしり、硬い物を好んで噛む習慣、さらに喫煙などは、被せ物や土台となる歯への負担や細菌の侵入リスクを高める要因です。
こうした習慣に気づいて改善できると、差し歯を快適に使い続けられる可能性が高まります。自分の歯と同じように大切に扱う意識が、日々の安心につながります。
まとめ|痛みが続くときは早めに歯医者へ相談を

差し歯に痛みを感じた場合、「少し様子を見ればよくなる」と思って放置してしまう方も少なくありません。
しかし、噛み合わせのズレや虫歯の再発、歯根や歯周組織のトラブルなど、原因はさまざまです。
応急ケアで痛みが落ち着いても、根本的な問題が残っていると、再発や治療の長期化、費用の増加につながる恐れがあります。
そのため、痛みが数日以上続いたり、違和感が強まったりするときは、早めに歯科医院へ相談することが大切です。
適切な時期に受診することで、差し歯の状態を長く良好に保てます。
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この記事を監修した人

歯科ハミール本院 院長 赤崎 絢
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