片方の頬が急に腫れて、押すとズキッと痛む――。
そんなとき「虫歯が原因?それとも耳鼻科や内科に行くべき?」と迷う方は少なくありません。
実際、頬の腫れの原因は虫歯や歯周病といった歯科トラブルだけではなく、副鼻腔炎や耳下腺炎、リンパ節の腫れなど複数の病気が関わっている可能性があります。症状によって受診すべき診療科は異なるため、放置せず早めに行動することが大切です。
この記事では、片方の頬が腫れて痛むときに考えられる主な原因や自宅でできる応急処置、受診すべき診療科の目安を解説します。さらに、放置した場合のリスクや治療の流れ、ストレスとの関わりまでを紹介します。
目次
片方の頬が腫れて押すと痛いときに考えられる4つの原因

急に片方の頬が腫れて痛むと、何が原因なのかわからず不安に感じるでしょう。歯のトラブルだと考える方がほとんどですが、実はそれだけが原因とは限りません。複数の可能性があるため、まずは見極めることが大切です。ここでは代表的な4つの原因を紹介します。
虫歯や歯周病など歯科トラブルによる炎症
片方の頬が腫れる原因として最も多いのが、虫歯や歯周病による炎症です。虫歯が進行して神経に細菌が入り込むと、歯根の先に膿がたまり、やがて歯ぐきや頬まで腫れてきます。歯周病の場合も、炎症が悪化すると歯ぐきが大きく腫れ、頬にまで広がってしまう場合があります。
これらを放置すると痛みが強くなり、抜歯や全身への感染につながる恐れがあるため、できるだけ早めに歯科を受診しましょう。
親知らずや副鼻腔炎などによる腫れ
親知らずが斜めや横向きに生えていると、その周囲に細菌が繁殖しやすくなり、炎症によって頬が腫れてきます。とくに親知らずの周りは歯ブラシが届きにくいため、磨き残しから炎症が広がりやすいのです。
また、鼻の奥にある副鼻腔に膿がたまる副鼻腔炎(蓄膿症)でも、頬の奥に重く響くような痛みが出ることがあります。鼻づまりや頭痛を伴うときは、副鼻腔炎が原因の一つとして考えられます。
耳下腺炎・皮膚感染・腫瘍の可能性
原因として考えられるものの一つが、ウイルス感染による耳下腺炎です。代表的なのが、おたふく風邪で、頬の奥にある耳下腺に炎症を起こし、腫れや痛みをもたらします。
また、皮膚に細菌が入り込む蜂窩織炎(ほうかしきえん)や丹毒(たんどく)などの感染症が生じ、頬が赤く熱を帯びて腫れる場合もあります。さらに、耳下腺や副鼻腔に腫瘍ができて長引く腫れの原因となることもありますが、これは極めてまれです。
リンパ節の腫れが原因になるケース
頬の近くにはリンパ節があり、体の免疫反応によって腫れることがあります。風邪や扁桃炎などの感染症が原因でリンパ節が腫れ、頬が膨らんだように見えることも少なくありません。多くの場合は感染が治れば自然に小さくなります。
ただし、腫れが長引いたり硬いしこりのように触れる場合は、精密検査が必要になる可能性があります。リンパ節の腫れは体からのサインであり、軽く考えずに注意を払うことが大切です。
関連記事:【保存版】副鼻腔炎で歯が痛いときの対処法10選|歯が痛むときの特徴も解説
自宅でできる応急処置と注意点

痛みをやわらげるために、自宅でできる応急処置は大きな助けになります。ここでは、冷やし方や市販薬の使い方、避けたい自己流の対処法を紹介します。
冷やして痛みをやわらげる方法
手軽に取り入れやすい方法が、患部を冷やすことです。清潔なタオルで包んだ保冷剤や濡れタオルを頬の外側から10〜15分ほどあてると、炎症がやわらぎます。
ただし、氷を直接肌に当てるのは避けましょう。また、長時間冷やし続けると血流が悪くなり、かえって治りを遅らせる原因になります。短時間冷やしては離すことを繰り返すのが効果的です。
市販薬やうがい薬の正しい使い方
痛みが強いときには、市販の鎮痛薬を一時的に使う方法があります。ロキソニンやアセトアミノフェンなどは効果がありますが、用法・用量は必ず守りましょう。
また、口の中を清潔に保つためにうがい薬を使うのも有効です。とくにアルコールを含まないタイプを選ぶと刺激が少なく、安心して使えます。
避けたい自己流の対処法
自己流の方法で症状を抑えようとするのは危険です。腫れている部分を強く押すことや、針を刺して膿を出そうとするのはやめましょう。細菌が広がり、症状を悪化させる恐れがあります。さらに、温めることで炎症が強まる場合もあるため、熱い飲み物などには注意が必要です。
応急処置はあくまで一時的に痛みをやわらげるための手段にすぎません。根本的な解決にはならないので、早めに医療機関を受診することを心がけましょう。
関連記事:歯が痛いときに歯医者に行けない場合の応急処置と受診目安
片方の頬が腫れたときは何科を受診すべき?3つの判断基準

頬の腫れは症状の現れ方によって受診すべき診療科が変わります。あらかじめ特徴を知っておけば、迷ったときも安心して行動できるでしょう。
下の表に代表的な症状と受診先、その理由を整理しました。
症状の特徴 | 受診すべき診療科 | 主な理由 |
歯の痛み・歯ぐきの腫れを伴う | 歯科 | 虫歯や歯周病、親知らずの炎症が原因の可能性 |
鼻づまり・頭痛・耳の奥の違和感がある | 耳鼻咽喉科 | 副鼻腔炎や耳下腺炎など耳鼻科領域の病気が原因の可能性 |
発熱・全身のだるさ・しこりを感じる | 内科 | 感染症やリンパ節の腫れなど全身的な病気を確認する必要がある |
歯科に行くべきケース
虫歯や歯周病、親知らずの炎症が疑われるときは、歯科を受診するのが基本です。歯の痛みやしみる感覚、歯ぐきの赤みや膿を伴う場合はとくに注意が必要です。放置せず、早めに受診して適切な治療を受けましょう。
耳鼻咽喉科や内科に行くべきケース
鼻づまりや頭痛、顔の奥の重たい痛みがあるときは、副鼻腔炎の可能性があります。この場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。
また、発熱や強い倦怠感を伴うときは、感染症やリンパ節の腫れが関係していることもあるため、内科での診察が必要です。
受診を急ぐ危険なサイン
腫れが急激に大きくなる、飲み込みにくさや息苦しさが出る、そして発熱が続く場合は危険なサインです。これらの症状があるときは、ためらわず救急外来を含めて早急に受診してください。
関連記事:歯が痛い すぐに歯医者に行けない人のための応急ケアと受診目安6選
放置するとどうなる?2つの悪化リスク

頬の腫れを放置すると症状が悪化し、思わぬトラブルにつながる恐れがあります。ここでは、代表的な2つのリスクを確認しておきましょう。
強い痛みや抜歯のリスク
虫歯や歯周病による腫れを放置すると、炎症が悪化して歯の根の周囲に膿がたまり、強い痛みを引き起こします。初期なら薬や処置で改善できますが、重症化すれば抜歯が必要になるでしょう。
さらに炎症があごの骨にまで広がると治療は長期化し、日常生活に大きな支障をきたします。腫れが軽いうちに歯科を受診することが、歯を残すためには欠かせません。
重症化や合併症の可能性
副鼻腔炎や耳下腺炎は、軽い症状のうちに治療すれば早く改善します。しかし、放置すると重症化し、合併症を引き起こすでしょう。
副鼻腔炎が悪化すると中耳炎や気管支炎につながり、まれに髄膜炎といった重大な病気に発展します。耳下腺炎では膿がたまり、切開して排膿が必要になるケースもあります。
治療にかかる2つの期間と費用の目安

治療にどのくらいの期間や費用がかかるのかは、多くの方が気になるポイントです。軽症から重症まで幅があるため、全体像を下の表で確認してみましょう。
治療内容 | 期間の目安 | 費用の目安(保険適用) |
軽度の炎症・投薬治療 | 数日〜1週間 | 数千円 |
根管治療(歯の奥の治療) | 数週間(複数回の通院が必要) | 約1万円 |
親知らずの抜歯 | 1日 (術後は数日腫れることあり) | 数千円〜1万円 |
副鼻腔炎や耳下腺炎の重症例 (手術・入院) | 数週間 | 数万円以上 |
ここで紹介した期間や費用は、あくまで目安です。症状の進行度や治療内容によっては前後することがあります。
ただし、軽いうちに治療を始めれば短期間かつ少ない費用で済むことが多く、早めの受診が結果的に負担を減らすことにつながります。
関連記事:訪問歯科を受ける前に知っておきたい注意点【費用・対象者・できること】
ストレスが頬の腫れを悪化させる要因

ストレスも見逃せない要因の一つです。強いストレスは免疫力の低下や歯ぎしりの原因となり、腫れや痛みを悪化させます。ここでは、ストレスが頬の腫れに影響する要因と、予防につなげるポイントを見ていきましょう。
ストレスで免疫が落ちると腫れやすくなる理由
強いストレスを抱えると、自律神経やホルモンのバランスが崩れ、体の免疫力が低下します。免疫が落ちると細菌やウイルスに感染しやすくなり、歯周病や口内炎、副鼻腔炎などが悪化します。その結果、頬の腫れとして症状が出ることも少なくありません。
とくに睡眠不足や疲労が続いている方は、ストレスの影響を受けやすいため注意が必要です。
歯ぎしり・食いしばりによる負担
ストレスは、無意識下で歯ぎしりや食いしばりを引き起こします。とくに就寝中は気づかないうちに顎や歯へ大きな負担がかかり、筋肉のこわばりによって頬の腫れや痛みを感じることがあります。
この状態が続くと歯の摩耗や顎関節症にもつながるため、マウスピースを用いた予防や歯科での相談が有効です。
ストレスを減らすためにできる工夫
ストレスをため込まない工夫は欠かせません。十分な睡眠と栄養バランスのとれた食事を心がけ、軽い運動や趣味の時間を持つことが効果的です。
また、深呼吸やストレッチなど手軽にできるリラックス法も役立ちます。気持ちの不安が強いときには、心理カウンセラーなどに相談するのも有効です。心と体を整えることが、頬の腫れの予防につながります。
関連記事:【9割が知らない】夜になると歯が痛いのはストレスが原因?対処法も解説
まとめ|頬の腫れは自己判断せず早めの受診を

片方の頬が腫れて押すと痛むとき、その原因は歯科の病気だけではありません。虫歯や歯周病に加え、副鼻腔炎や耳下腺炎、リンパ節の腫れなど、複数の病気が関わっている可能性があります。応急処置でやわらげることはできますが、治すには受診が必要です。
症状によって受診すべき診療科は異なり、歯科・耳鼻咽喉科・内科などに分かれます。とくに、腫れが急速に広がる場合や発熱が続く場合、息苦しさや飲み込みづらさがある場合には、ためらわず早めに受診してください。
頬の腫れを放置すると、抜歯が必要になる恐れがあり、重症化すれば全身の合併症につながる危険もあります。治療にかかる期間や費用は症状によって異なりますが、早く受診するほど負担は小さくなるでしょう。
さらに、ストレスが免疫力の低下や歯ぎしりにつながり、腫れを悪化させます。日常生活の中で心身のバランスを整えることも、予防には欠かせません。
頬の腫れは一見軽く思えても、危険なサインでもあります。自己判断せず、早めに医療機関を受診して原因を明らかにし、適切な治療につなげましょう。
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