「親知らずを抜歯して3日目だけど、チョコを食べても平気?」
「ナッツ入りチョコを口にしたら傷が開かないか心配…」
この記事は、そんな不安や疑問にお答えします。
この記事でわかること
・チョコを食べてよい時期と症状の目安
・避けるべき/食べてもよい食べ物
・ドライソケットを防ぐうがいと歯磨きの手順
親知らずの抜歯後とはいえ、甘い物を完全に断つのはつらいですよね。
板チョコは、痛みと出血が消えた1週間後を目安に少量から再開できます。
「血餅」を守りながら、軟らかい食事から段階的に始めると傷が治りやすいです。
この記事を読むことで、甘いものの欲求を満たしつつ傷を悪化させない食事とセルフケアの流れがつかめます。
最後まで読んで、安心して甘いものを楽しめるようになってください。
目次
親知らず抜歯後のチョコレートはいつからOK?

親知らずを抜いたばかりなのに、無性に甘いものが食べたくなることがあります。
特にチョコレート好きの方にとっては、しばらく食べられない時期はつらいものです。
ここでは次のことについて解説します。
- チョコレート解禁の目安
- 板チョコを控えるべきサイン
- チョコレートが傷口に与えるリスク
安全にチョコレートが食べられるタイミングについて、詳しく見ていきましょう。
チョコレート解禁の目安
親知らずの抜歯後、「板チョコを丸かじり」できるようになるのは、抜歯から約7日後が目安です。通常この頃には、傷口を塞いでいた肉芽組織(傷を修復するためにできる新しい組織)が、噛む圧力に耐えられる強さに変化しています。
以下の3つの項目がすべて揃っていれば、少量から板チョコを再開しても大丈夫です。
- 鈍い痛みが弱まり、血がにじまなくなる
- うがいをした際の強いしみる感じがなくなり、腫れが半分以下になる
- 傷口の白い膜が淡いピンク色に変わり、口を開けても脈打つような痛みがなくなる
板チョコを控えるべきサイン
ただし、7日以上経過した場合でも、以下の症状がある場合は板チョコの解禁は延期してください。
- 発熱が37度を超える
- 拍動するような痛みが残る
- 口の中に嫌な味がする
これらの症状は、まだ傷口が完全に治癒していない、または炎症が続いているサインです。
その間にチョコレートへの欲求が高まるときは、アイスシューやプリンなどで代用することをおすすめします。
チョコレートが傷口に与えるリスク
上で紹介したチェック項目をクリアしていても、チョコレートが傷口に与えるリスクがあることを知っておくことは重要です。親知らず抜歯後にチョコレートを食べる際は、以下のリスクに注意してください。
- 糖分による細菌の増加:チョコレートに含まれる糖分は、お口の中の細菌を増やし、傷口の感染リスクを高める可能性があります
- 血餅が剥がれる:硬いチョコレートを噛むと、傷口を守っている血餅(けっぺい)が剥がれてしまうことがあります
- 温度差で神経が刺激を受ける:冷たいチョコレートや急激な温度変化は、敏感な神経を刺激し、痛みを誘発する場合があります
再処置が必要になる場合があります。
どうしても甘いものが欲しい場合は、生チョコを小指の先ほどに割り、ほおの内側でゆっくり溶かして楽しむ程度にしましょう。
関連記事:親知らず抜歯にかかる実際の時間|親知らずを放置した時のリスクも解説
抜歯後に避けたほうがいい食べ物・飲み物

親知らずを抜いた直後は、傷口を保護する血餅(けっぺい)を守ることが最も重要です。
そのためには、普段の食事で避けるべき食べ物や飲み物があります。ここでは特に注意が必要な3つのカテゴリーについて解説します。
- 硬い・尖った食材
- 粘着・粉状・粒状の食材
- 刺激物・アルコール・熱い食事
理由や代替案を解説しますので、抜歯後の食事の参考にしてください。
硬い・尖った食材
硬くて尖ったものは、血餅を傷つけたり、傷口に突き刺さったりする危険があります。アーモンド入りチョコやポテトチップスの欠片などです。これらは再出血や痛みの原因になることがあります。
【代替案】
回復するまでは、食べ物を粉末状に砕くか、ヨーグルトなどに溶かして柔らかくして食べましょう。砕くときはジップロックに入れて麺棒などで叩くと手軽です。
粘着・粉状・粒状の食材
キャラメルやきな粉、炒りゴマなど、粘着性のあるものや粉状・粒状の食材は、抜歯後の穴に張り付きやすく、取り除きにくいため避けた方がいいでしょう。
術後の隙間部分に入り込んでしまった場合、無理に吸い出すと血餅が剥がれ、ドライソケットの原因になる恐れがあります。
【代替案】
甘いものはチョコムースや豆乳プリンなど、水分が多くなめらかなものを選びましょう。食後は軽く口をゆすぐ程度にしてください。
刺激物・アルコール・熱い食事
唐辛子入りのラーメン、炭酸飲料、ウイスキー、熱い味噌汁など、刺激物やアルコール、高温の飲食物は、血流を急激に上げて出血や痛みを招く可能性があります。血餅が流れやすくなる原因にもなります。
【代替案】
冷ましたスープ、カフェインレスのココア、ノンアルコールビールなどに置き換えるのがおすすめです。再度の痛みを避けるためにも、療養中は特にアルコールの摂取を控えましょう。
関連記事:【保存版】親知らずが埋まっているかどうかはレントゲンでわかるのか?
抜歯後でも安心して食べられるもの
親知らずの抜歯直後から約1週間は、傷口を刺激しない食べ物を選ぶことが回復への近道です。
ここでは、時期ごとのおすすめメニューをご紹介します。段階的に食べ方を工夫すれば、甘いものも無理なく楽しめます。
- 当日〜翌日:ゼリー・スムージー
- 3日目以降:プリン・お粥
- 1週間後〜:板チョコの安全な食べ方
それぞれ詳しく解説します。
当日〜翌日:ゼリー・スムージー
抜歯当日は、噛まずに食べられるものが安全です。血餅がまだ不安定なため、少しの圧力でも剥がれてしまう恐れがあります。
おすすめの食事は、ゼリーやスムージーなどです。舌で軽く潰せる柔らかさなら、痛む心配も少ないためおすすめです。
甘みを足したい場合は、オリゴ糖などを少量加えるにとどめましょう。
3日目以降:プリン・お粥
抜歯後3日目くらいからは、軽い咀嚼ができるようになります。この時期は肉芽が盛り上がり、弱い圧力なら血餅が安定してきます。
おすすめメニューは、なめらかなプリンやお粥などです。お粥は米粒が簡単にほぐれる柔らかさが目安で、味付けは薄めにします。
食後は軽く口をゆすぎ、歯ブラシで歯の表面だけを優しく磨きましょう。
1週間後〜:板チョコの安全な食べ方
抜歯後1週間が過ぎ、痛みや出血がすっかり治まっていれば、板チョコを少しずつ食べられるようになります。この頃には傷口の粘膜が閉じ始めているため、軽い咀嚼程度なら問題ありません。
食べるときは、板チョコを細かく割り、頬側の奥歯でそっと噛み、その後は舌の上でゆっくり溶かしながら食べるのがおすすめです。冷蔵庫に入れておいた冷たいチョコは硬すぎるため、常温で5分ほど置いてから食べると刺激が少なくなります。
もし、食べている最中に痛みや違和感を感じたら、無理をせずに中断してください。
抜歯手術後のトラブルを防ぐ口腔ケア

親知らず抜歯後の口腔ケアでは、傷口の血餅を守り、細菌の増殖を抑えることがポイントです。
ここでは、次の点について解説します。
- ドライソケットを防ぐ正しいうがい・歯磨きの方法
- ジェットウォッシャーがNGな理由
- 抜歯穴へ詰まった食片の安全な取り除き方
適切なケアで、痛みのない回復を目指しましょう。
ドライソケットを防ぐ正しいうがい・歯磨きの方法
ドライソケットとは、抜歯後に傷口を守る血餅が失われ、骨が露出して激しい痛みを伴う状態のことです。
ドライソケットを防ぐために、抜歯当日は弱いうがいと限定的なブラッシングにとどめます。 強い水流や広い範囲のブラッシングは、傷口を守る血餅を洗い流してしまう危険があります。
具体的なうがいと歯磨きの方法は以下のとおりです。
- うがい:水10ml程度を口に含み、3秒ほどゆらして静かに吐き出しましょう
- 歯磨き: 傷口から2本分ほど離れた歯だけを、横磨きで15秒以内にとどめます
歯磨き粉は、発泡剤が刺激になるため抜歯後2日目まで控えてください。 弱い水流で触れずに洗うことで血餅が残り、ドライソケットを防げます。
ジェットウォッシャーがNGな理由
ジェットウォッシャーの水圧は、血餅を一瞬で吹き飛ばしてしまうほど強力です。抜歯後のデリケートな傷口には絶対に使用しないでください。
家庭用であっても先端の圧力は非常に高く、水流の速度は毎秒7メートル以上にもなります。これが傷口に直接当たると血餅が失われ、ドライソケットを引き起こす原因になります。
弱モードでも水圧は通常のうがいの約10倍にあたります。抜歯後は少なくとも14日間、ジェットウォッシャーの使用は控えるようにしましょう。
抜歯穴へ詰まった食片の安全な取り除き方
抜歯穴に食べ物が詰まった場合は、吸い出さず「流し出す」のが基本です。 吸引すると陰圧で血餅が動き、ドライソケットの原因となるため避けましょう。
食べ物が詰まったときの安全な取り除き方は、以下のとおりです。
- ぬるま湯50mlを口に含む
- 頬を左右にゆっくり揺らし、10秒間キープ
- 水を前に押し出すようにして、静かに排出
以上の方法で取れ残ってしまった場合は、無理せず歯科医院で吸引してもらいましょう。
自宅でピンセットなどを使うと、粘膜を傷つけてしまう恐れがあります。安全な方法を守り、回復を順調に進めてください。
回復を早めるセルフケアと栄養素

傷口の治癒を促進し、不快な症状を軽減するために、日常生活で意識すべきポイントをご紹介します。
- 冷温リズム療法・睡眠・禁煙禁酒
- タンパク質・ビタミン・亜鉛を多めに摂取
- 運動・入浴の再開タイミング
これらの要素を意識して取り入れることで、抜歯後の回復をよりスムーズに進めることができるでしょう。
冷温リズム療法・睡眠・禁煙禁酒
冷温リズム療法とは、体温を意図的に上げ下げする治療法です。血管の収縮と拡張を繰り返し行うことで、血行促進や自律神経の調整、免疫力向上などの効果が期待できます。
- 15分冷やす → 15分休む → 15分温める
この動作を2セット繰り返すことで、血流が調整され、抜歯後の歯茎の腫れが引きやすくなります。
同時に、十分な睡眠と禁煙・禁酒を守ることで、炎症物質が減り痛みが和らぎます。これらのケアを抜歯当日から3日目まで続けることで、治癒スピードが向上します。
タンパク質・ビタミン・亜鉛を多めに摂取
傷口の治癒や新しい組織(肉芽)の再生には、しっかりと栄養を取ることが大切です。特に重要なのはタンパク質とビタミンCで、目安としては1食あたりタンパク質10g以上、ビタミンC50mg以上を意識するとよいでしょう。
これらの栄養素が摂れる食事として、たとえば以下のようなメニューがあります。
- 豆腐と小松菜のスープ
- 鮭フレークを混ぜたお粥
- 豚ひき肉入りのやわらかい肉じゃが
- カキフライ
- 納豆
また、亜鉛はコラーゲンの合成を助け、傷口の閉鎖を早める効果があります。カキ小1個には約8mgの亜鉛が含まれているので、1日の食事にうまく取り入れていくと効果的です。
運動・入浴の再開タイミング
抜歯後の運動や入浴は、再出血のリスクがあるため注意が必要です。軽いストレッチは抜歯後4日目から、ジョギングや湯船での入浴は7日目からを目安に再開しましょう。
激しい運動は脈拍を上げ、再出血の恐れがあるため、最低でも1週間は控えてください。
入浴は38度程度のぬるま湯で15分以内にとどめ、のぼせによる血圧上昇を避けましょう。もし少しでも違和感が出た場合はすぐに中止し、再開を遅らせてください。
よくある質問(Q&A)

抜歯後の食事や運動には不安がつきものです。ここでは、特に多く寄せられる4つの疑問を取り上げ、その解決策と注意点をまとめました。
- 抜歯3日目で冷たいチョコがしみるのは「異常」?
- チョコを詰まらせたら綿棒で取って良い?
- スポーツ前にチョコを摂ると出血しやすい?
- 血が止まらない時の応急止血法は?
順番に見ていきましょう。
抜歯3日目で冷たいチョコがしみるのは「異常」?
軽いしみであれば正常な範囲です。 しみるのは、まだ肉芽(新しい組織)が完全にできていないため、冷たい温度刺激が神経に伝わりやすいからです。
すぐに痛みが消えるなら問題ありません。 しかし、鋭い痛みが続いたり強い拍動を感じる場合は、血餅が薄いか、炎症が残っているサインかもしれません。
その場合は、冷たいデザートを2日ほど避け、常温の食べ物に切り替えて様子を見てください。それでも改善しない場合は、歯科医院で消毒などの処置を受けましょう。
チョコを詰まらせたら綿棒で取って良い?
綿棒の使用は避けてください。 綿棒の繊維が傷に絡まったり、血餅を動かしてしまったりする危険性があるからです。
安全な方法は、ぬるま湯を口に含み、頬を左右にゆっくり揺らして、静かに排出することです。もしこれで取れない場合は、翌日まで放置し、痛みや腫れが出たら歯科医院で洗浄してもらいましょう。不用意に触らないことが、傷の回復を早める近道です。
スポーツ前にチョコを摂ると出血しやすい?
高強度の運動前は、チョコレートの摂取は避けた方が無難です。 チョコレートに含まれる糖分で血糖値が急上昇し、それに伴い血圧も上がりやすくなるためです。
血圧の上昇は傷口の毛細血管を広げ、出血の原因となることがあります。運動前にエネルギー補給が必要な場合は、バナナと水などで代用してください。
運動の強さは、軽いストレッチ程度であれば問題ありませんが、全力で走るような激しい運動は、抜歯後1週間は控えるようにしましょう。
血が止まらない時の応急止血法は?
血が止まらない時は、ガーゼによる圧迫止血が基本です。 清潔な滅菌ガーゼを折りたたみ、抜歯窩に軽く当てて10〜20分ほど、しっかりと噛み続けてください。
20分経っても止まらない場合は、新しいガーゼで再度20分間の圧迫止血を試みましょう。
それでも変化がなければ、夜間救急を受診してください。応急処置として、氷袋などで頬の外側から5分ほど冷やすと、血管が収縮し止血を助ける効果が期待できます。
まとめ:親知らず抜歯後は血餅を守り、段階的に甘いものを楽しもう
最後に、親知らず抜歯後の回復をスムーズに進めるためのポイントを整理します。
- 抜歯後1週間は血餅を守る食事と弱いうがいで回復を優先
- NG食材は硬い物・粉状物・刺激物、OK食材はゼリー→プリン→板チョコの順
- 冷温リズム療法・高栄養メニュー・十分な睡眠で治癒スピードが向上
- トラブル予防は弱いうがい、ジェットウォッシャー禁止、ガーゼ圧迫止血が基本
- 運動と入浴は4日目から徐々に再開し、全力運動は1週間程度控える
抜歯直後は焦らず、上記のポイントを守って丁寧にケアしてください。適切な食材選びとセルフケアを意識すれば、甘いものも安心して楽しめる日がすぐにやってきます。
当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。
この記事を監修した人
